犬は、人間の何倍ものスピードでその犬生を駆け抜けていきます。
愛犬の最期を考えたくない。
できることなら、考えずに過ごしたい。
それでも、頭のどこかで「この先」を意識してしまいますよね。
そして、最期は腕の中で旅立たせてあげたい。
そう思うのは、あなたがそれだけ愛犬を大切に想っているからです。
しかし、実際の看取りは、理想通りにいくことはほとんどありません。
どんな形であれ、どんな選択であれ、後悔は必ず残ります。
この記事では、4匹の愛犬を看取った私が、愛犬の看取りで後悔しないために知っておいてほしいことをまとめました。
愛犬を看取りたくない。その不安は大切に想い愛してきた証

愛犬の看取りを怖いと感じるのは、それだけ愛犬を大切にしてきた証です。
中には、「悲しいから最期を見たくない」と思う飼い主さんもいるでしょう。
でも、愛犬は大好きなあなたのそばで、愛に包まれながら旅立ちたいのです。
これまで、愛犬があなたにくれたものを、少しだけ思い出してみてください。
嬉しいときも、つらいときも、愛犬はいつもあなたを一途に想い、1日1日を一生懸命に生きてきてくれました。
だからこそ、愛犬の看取りを怖いと感じるのではなく、愛犬の最期に「何をしてあげられるか」を考える出発点にしていきましょう。
愛犬が旅立つ前に見せるサインと最期の寄り添い方

犬は言葉でつらさを伝えることができません。
そのため、体や行動の変化を通して、静かに「最期が近いこと」を知らせてくれる場合があります。
ただし、ここで紹介するサインは、すべての犬に必ず現れるものではありません。
また、これらの変化が見られたからといって旅立ちのサインとは限らず、単なる体調不良ということも考えられます。
大切なのは、無理に当てはめることではなく、獣医師と連携しながら今の愛犬の状態を正しく理解することです。
食事や水を受けつけなくなる
犬は最期が近づくと、体のさまざまな機能が自然に休む準備をし始めます。
その影響で、これまで食べていたごはんに口をつけなくなったり、水をほとんど飲まなくなったりすることもあります。
こうしたことが見られるようになったら、無理に食べさせる必要はありません。
口の周りを湿らせたり、好きだった香りを感じさせてあげるだけでも、愛犬は安心してくれるでしょう。
ただし、自己判断するのではなく、獣医師に相談することが大切です。
呼吸や体温に変化が出る
犬は最期が近づくと、呼吸が浅くなったり、リズムが不規則になることがあります。
また、手足や体が冷たく感じられることも珍しくありません。
これは、心臓や血流などの働きが弱まり、体全体に十分な酸素や熱が行き渡りにくくなるためです。
無理に体を動かしたり温めすぎたりせず、そっと触れ、そばで静かに声をかけてあげましょう。
行動に変化が見られる
旅立ちの数日前になると、これまでとは違った行動が見られることもあります。
急に甘えるようになったり、まるで目に焼きつけるかのようにじっと飼い主を見つめたりする犬も少なくありません。
実際、私の愛犬たちも旅立つ前日にこうした行動が見られました。
体調や感覚の変化に不安を感じているという説もありますが、なぜこのような行動が見られるのかについては、はっきりとした理由は分かっていません。
動物病院?自宅?「犬の看取り」に正解はない

愛犬の最期を迎える場所として、「動物病院」と「自宅」のどちらを選ぶべきか悩む飼い主さんは少なくありません。
どちらが正しい、間違っているという答えはなく、犬の状態や飼い主の考え方によって、最善の選択は変わります。
大切なのは「理想通りにできるか」ではなく、その時点で愛犬にとって一番負担が少なく、飼い主自身も向き合える選択かどうかです。
ここでは、動物病院と自宅、それぞれの看取りについて、特徴と考え方を知っておきましょう。
動物病院での看取り|医療的ケアを優先する選択
動物病院での看取りは、呼吸管理や痛みのコントロールなど、医療的なケアを受けられる安心感があります。
ただし、最期の瞬間に飼い主が立ち会えないケースも少なくありません。
特に入院中や夜間は、ひとりで旅立つこともあります。
病院での立ち会いが可能な場合は、安楽死を選択したときに限られることが多いのが現実です。
それでも、苦痛を和らげるためのケアを受けられることは、大切な選択のひとつと言えるでしょう。
自宅での看取り|住み慣れた場所で寄り添う選択
自宅での看取りは、愛犬が安心できる環境で、家族の声や匂いに包まれて過ごせることが大きな特徴です。
ただし、自宅であっても、必ず最期に立ち会えるとは限りません。
ほんの短い外出中や、夜間の静かな時間に、そっと旅立つ犬もいます。
それは決して、飼い主の選択や行動が間違っていたからではありません。
大切なのは、「その瞬間に立ち会えたかどうか」ではなく、最期まで愛犬にとって安心できる時間を一緒に過ごせていたかどうかです。
愛犬の息が止まった時あなたにしかできない「最期のケア」

愛犬の呼吸が止まった瞬間、頭が真っ白になってしまうでしょう。
何かをしなければ、と焦る必要はありません。
まずは、その時間を、あなたと愛犬だけのものとして受け止めてください。
ここから先は、「必ずやらなければならないこと」ではありません。
あなたが愛犬のために、してあげたいと思うことです。
たくさんの感謝と愛を伝えてあげる
呼吸が止まったら、顔をなでながら優しく目を閉じてあげましょう。
犬は亡くなったあと、目の構造的に完全には閉じないことも多いため、閉じてあげられなくても悔やまないでください。
そして、名前を呼びながら、これまでの感謝や「大好きだよ」という気持ちを伝えてあげましょう。
生命活動を終えても、細胞レベルでは数時間から1日程度、反応が残ると考えられています。
言葉にならなくても、そばにいることそのものが、あなたにしかできない最期の時間です。
体を清めてきれいな姿に整えてあげる
少し落ち着いたら、ぬるま湯で湿らせたタオルなどで、口元や体をやさしく拭いてあげましょう。
頭の下にタオルを重ねるなどして、頭を少し高くしてあげると、体液が口や鼻から出にくくなります。
もし体液が出てきた場合は、驚かずに、そっと拭き取ってあげてください。
ブラッシングをしたり、爪切りをしたり、きれいな姿に整えてあげましょう。
また、体をきれいにしてあげたいと思い、シャンプーをしようと考えるかもしれません。
しかし、亡くなったあとの体は水分を含むと傷みやすくなるため、基本的にはシャンプーは行わないほうが安心です。
汚れが気になる場合は、水のいらないシャンプーなどを使い、できるだけ体を濡らさない方法を選んであげてくださいね。
死後硬直が始まる前に楽な姿勢にしてあげる
亡くなってからしばらくすると、体は少しずつ硬くなり始めます。
その前に、優しく手足を自然に曲げ、丸く眠っているような姿勢に整えてあげましょう。
関節を傷めないよう、「楽そうかどうか」を目安にするだけで十分です。
また、すでに体が硬くなり始めている場合は、無理に姿勢を変える必要はありません。
なお、時間の経過とともに、いったん硬くなった体が少し緩むこともあります。
その際、力を加えず、自然に整えられるようであれば、楽そうな姿勢に整えてあげてもかまいません。
ただし、タイミングや程度には個体差があるため、違和感があったり、無理がかかりそうな場合は、そのままそっと整えるだけで十分です。
葬儀までの数日間愛犬と「一緒に過ごす」ためにできること

愛犬が旅立ったあと、すぐに何もかもを決めなければいけないわけではありません。
心と時間が追いつかないまま動いてしまうと、後になって強い後悔が残ってしまうことがあります。
この数日間は、お別れの準備をする時間であり、気持ちを整えるための時間でもあるので、大切に過ごしましょう。
焦って葬儀社を決めなくていい
亡くなった直後は、冷静な判断が難しい状態です。
焦って葬儀をしてしまうと、後になって後悔してしまうこともあるため、本当に納得できる葬儀の形を考えましょう。
季節や環境にもよりますが、保冷剤などで適切に冷や、涼しい場所で安置すれば、数日間一緒に過ごすことが可能です。
思い出を振り返り、手元に残す形を考える
愛犬と一緒に過ごす最期の時間は、これまでの思い出を振り返ってみてください。
首輪やリード、使っていた毛布を手に取ったりすることで、「一緒に生きてきた時間」が少しずつ実感として残るでしょう。
中には、遺骨の一部をペンダントなどの形で手元に残す人もいます。

私自身も、遺骨の一部を身につけるという選択をしました。
手元に残す形に、正解はありません。自分が納得のいく方法を選ぶことが大切です。
まとめ|今、目の前の愛犬との時間を大切にすごそう

愛犬の看取りについて考えることは、とてもつらく、避けたくなるテーマかもしれません。
それでも不安になるのは、あなたがそれだけ愛犬を大切に想っているからです。
看取りに、正解はありません。
どこで看取りを迎えるか、立ち会えたか、何をしてあげられたか。どんな選択をしても、後悔がまったく残らないことはないでしょう。
だからこそ大切なのは、「最期の瞬間」だけに意識を向けすぎないことです。
今、あなたの愛犬は1日1日を一生懸命に生きています。どうか、目の前の愛犬との時間を大切にしてください。
<参考文献>
The Dog Pedia「Recognizing End-of-Life Breathing Changes In Dogs: A Guide For Comfort Care」
この記事を書いた人

たかだ なつき(高田 菜月)
ペット専門ライター
ペット終活アドバイザー / 動物介護士 / メディカルトリマー / ペットフーディスト / ペット食育士1級 / ホリスティックケア・カウンセラー / 愛玩動物救命士 / ペットセーバー / CPD認定 Animal Behaviour and Psychology 修了 ほか
これまで4匹の愛犬を、それぞれ異なる病気での闘病・介護の末に看取ってきました。
18歳まで寄り添った子を含め、すべて病死という現実に直面し、そのたびに「もっと何かできたのでは」という葛藤や、身を切られるような別れの痛みを経験しています。
ペットの専門家としての知識以上に、ひとりの飼い主として「その痛みを知る者」でありたい。そんな想いを込めて、あたたかな言葉を届けています。